感染拡大に伴う休校で授業の遅れなどが懸念される高校3年生。写真は大学入試センター試験=1月18日、宇都宮大峰キャンパス

 新型コロナウイルス感染拡大で休校が長期化する中、授業遅れの打開策として浮上した「9月入学制」。県内の高校生や保護者は選択肢の一つと評価する一方、「移行期の学費は誰が払うのか」「来年までに事態は収束するのか」と疑問の声も上がった。識者は「法改正などハードルが高く、個々に与える影響が大きい。慎重に議論すべきだ」と指摘し、「今は学びの場を奪われた児童生徒たちの支援が最も大切」としている。

 「失われた時間を返してほしい」。栃木商業高3年浅野暖斗(あさのはると)さん(17)は切々とこう訴える。学校での授業や友人と過ごす日常から離れた日々を過ごし、9月入学制も「選択肢の一つ」と受け止める。一方で自粛緩和の流れで感染拡大の第2波を懸念し、「来年までに収束するのか。もうこれ以上振り回されたくない」と声を絞り出した。

 9月入学制が導入されれば、進学、卒業、就職は5カ月遅くなる。延びた4~8月分の学費負担の増加や、就職への影響も懸念される。高校2年の長女と小学2年の長男を育てる日光市塩野室町、福冨泰宏(ふくとみやすひろ)さん(45)は「議論を深めるのはいいが、まずは感染症対策が最優先ではないか」とする。

 教育現場からは慎重論が上がる。「子どもや保護者をこれ以上、混乱させてはいけない」。県小学校長会会長で宇都宮市西原小の栗原武夫(くりはらたけお)校長(60)は強調する。市内では段階的に分散登校日を設け、児童一人一人の学習や健康面のケアに力を入れている。

 授業の遅れへの対応は夏休みの短縮などを見込んでおり、「入学時期を変えるならば、多様な視点から計画的に審議する必要がある。現場は児童の目線に立ち、今できることを地道にやるしかない」。

 移行期間の保育所の受け入れ態勢や企業、自治体との会計年度のずれ、義務教育の開始年齢の遅れ…。宇都宮大の藤井佐知子(ふじいさちこ)総括理事(61)(教育行政学)は「学校制度の変革は社会全体を巻き込む問題。大幅な法改正も必要となり、冷静に議論すべきだ」と説明する。

 義務教育開始年齢の遅れは「9月入学のメリットとされる国際競争力の強化とは真逆の効果を生む」とも主張。「入学を半年遅らせても教育格差は広がり続ける。今大切なのは、オンライン学習の整備など学びの場を奪われた児童生徒たちへの手厚い支援だ」と指摘した。