「最高のがん治療」(ダイヤモンド社)という新刊を購入したのは、その挑戦的な書名にひかれたばかりではない。がんの専門家の間ですこぶる評判が良かったからだ▼結論は冒頭であっけなく明かされる。保険適用される「標準治療」が「最も効果が認められるがんの治療法」だという。薬や治療法が標準となるまでに、広範な研究から絞り込まれ、複雑な手順で安全性と有効性が検証される過程を語っている▼がんの標準治療と認められれば保険適用となる。適用後も治療成績は集約され、新知見があればさらに検証、上書きされていく。その積み重ねこそが「現在の最高」なのだ▼信頼できる専門家の特徴も挙げる。筆頭は「標準治療を推奨する」。科学的根拠をもって実践できるベストの選択だからだ。もう一つは「ほかの医師と治療判断が変わらない」。医療のプロ同士が「標準治療を最優先するはず」と信頼し合う証しだろう▼新型コロナウイルス感染症では特効薬の候補名が連日伝えられる。だが、薬が行き渡るには時間がかかる。命と健康に関わる仕事に拙速は許されない▼新型コロナの国内死者は400人超。感染爆発までは至らず、我慢は無駄ではなさそうだ。われわれができることとして家にいよう。総力を挙げて「標準」を追究する世界中の医師と研究者を信じて。