ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の旧本拠地は第2次大戦中、連合国軍の空襲で全壊した。ドイツの戦況が悪化した1944年1月30日のことだ▼前年11月の空襲で建物は一部損壊し、窓もすべて吹き飛んだが、オーケストラは活動を続けていた。全壊の約2週間前、旧本拠地最後の演奏会の録音が残っている▼厳寒のベルリン、しかも空襲の不安に包まれたホールでどのような音楽が流れていたのか。これが実に明るいのだ。聴衆は少なくとも演奏中、過酷な現実を忘れたのではないか▼ベルリン・フィルはその後もホールを替えて演奏を続けた。戦中最後のコンサートは45年4月16日。ベルリンに進撃するソ連軍が首都包囲へ向け総攻撃を始めた日である▼新型コロナウイルス対策で、ドイツ政府がフリーランスを含めた芸術家への巨額支援を発表し、話題となった。グリュッタース文化担当相は会見で「芸術家は今(私たちの)生命維持に必要不可欠な存在だ」と述べた。ベルリン・フィルの歴史を振り返ると、少しも大げさでないと感じる▼外出制限を強いられる世界中の人々が、自宅でエンタメや芸術に救いを求めている。危機の中で前を向くにはパンだけでは足りない。だが、それらを生むアーティストが、活動の舞台を失い、窮地にある。日本政府の支援は十分だろうか。