出荷を控えた牛を見つめる佐藤さん。「五輪に向け、質の良い牛を用意していた」と語る=4月下旬、大田原市

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で牛肉の需要が低迷し、農業経営を圧迫している。販売価格が生産費用を下回り、採算割れの事態に陥った肥育農家からは「次の子牛を導入する資金を捻出できるかどうか」との声も出ている。行政などが資金繰り支援や需要喚起に策を講じているものの、事態の収束が見通せず農家の不安は募る。

 「先が見えない」。JAうつのみや肥育牛部会の石戸栄(いしどさかえ)部会長(68)は、予期せぬ事態に肩を落とす。

 この時期に出荷する牛は五輪需要を見込み、仕入れ値が高値だった。餌代など諸費用を含めて1頭120万円以上で販売できないと採算が取れない計算だが、100万円を割るのが現状という。毎月4頭と決まっていた子牛の導入も「次は見送ろうと思う」と話す。

 JA全農とちぎによると、訪日外国人客の減少や外食控えなどの影響で東京食肉市場の3月の枝肉相場は、和牛(A4)が1キログラム当たり前年比約3割減となった。4月に国の緊急事態宣言が発令されると、さらに下落した。

 和牛65頭を肥育する大田原市狭原(せばはら)、農業佐藤和徳(さとうかずのり)さん(56)も「これほど厳しい状況は初めて」と嘆く。販売価格が生産費を下回った場合、差額の9割を補填(ほてん)する制度もあるが、支給には時間がかかる。「このままでは廃業する農家も出てきてしまうのではないか」と懸念を示した。

 現状を少しでも改善しようと、県やJAグループ栃木は消費喚起に力を入れている。佐藤さんは「消費者の皆さんにも支えてもらい、オール栃木で乗り越えたい」と話した。