新型コロナに関するデマを否定するために一時張り出したお知らせ=4月中旬、日光市木和田島のスーパーさがみや

 新型コロナウイルス感染症を巡り、県内でデマや風評被害、中傷が相次いでいる。差別的言動の対象は、感染者と直接関わりがない人や診察した医療機関にも及ぶ。巻き込まれた当事者は、理不尽な仕打ちに心を痛めている。

 「何ですかそれ」

 3月下旬、日光市木和田島のスーパー「さがみや」の原田聡(はらださとし)社長(48)は耳を疑った。「店の従業員から感染者が出た」というツイッターに書き込まれた情報の真偽を、確かめる電話だった。事実無根だったため、急いで投稿者と連絡を取り誤情報の拡散を防いだが、問い合わせは相次いだ。

 「会員制交流サイト(SNS)を利用していないと思われる年配の方からも聞かれ、うわさが広まる速さに恐怖を感じた。客の激減も覚悟するまで思い詰めた」。デマがエスカレートし、従業員の個人名などがさらされる事態を避けるため、感染を否定するお知らせを入り口付近に張り出すなどし、何とか収まった。

 「(事実ではないことを)『回覧板で回そうか』と言ってくれた自治会長など、店を信じてくれる地域の方々のおかげで深刻な被害が出ずに済んだ」と振り返る。

 県内の商業施設は感染者が確認された後、従業員から聞き取りを行った。「地域の行事に参加しないで」「明日から職場に来るな」「子どもの学校行事への参加を控えて」-。

 会社名だけでひとくくりにされ、従業員だけでなく、子どもを含めた家族に対する差別的な言動の報告も相次いだ。会社側は「励ましの声ももらったが、『いくら何でも…』という例もあった」と明かす。

 「コロナ患者を診察したでしょ」

 感染者を診た県内の診療所も今月、業務にならないほど問い合わせが殺到した。県の発表では医療機関名は匿名だったが、すぐにSNS上でうわさに挙がっていた。

 感染者の診療時はもちろん、以前から感染予防を徹底している自負があった。濃厚接触者は1人も出なかったが、院長は「さらなるうわさやデマが広がるのが、怖かった」と話す。間もなく医療機関名に続いて、患者が住んでいる地域の詮索が始まっていた。

 「(感染者の診療前日に)診察を受け、胸が痛くなった。おたくでうつったと思う」「怖いよ、近づかないで」。「コロナウイルスが出た医療機関」とレッテルを貼られ、スタッフを含め風評、中傷も相次いだ。院長は「対策を徹底し誠実に診察したのに、たたかれるのは残念だ」と苦しい胸中を吐露した。