医療機関の玄関に掲げられた面会禁止の通知=21日午後、宇都宮市内

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で県内の医療機関の多くが原則面会禁止となっており、入院患者の家族が不安に包まれている。特にスマートフォンなどが使えない高齢者や寝たきりの患者の家族は様子を把握しづらいだけに、「症状が進んでしまうのでは」「会えないなりの情報がほしい」との声も。心情をくんだ試みを始めた事例もあるが、患者や医療スタッフを守るための感染防止対策が最優先のため、医療機関側は対応に苦慮している。

 「もし認知症なら会えないうちに症状が進んでしまう。会える日の見通しが付かないのがさらに不安」

 宇都宮市の主婦(74)は、同市内の医療機関に入院中の母親(94)に2カ月近く会っていない。治療方針を決めるため面会の許可が下り、兄、娘と病院へ行ったが、会えたのは代表者の兄のみだったという。

 多くの医療機関では重篤な状態や手術の事前説明などがない限り、患者や医療スタッフへの感染防止のため家族も面会できない。スマホの使用を認める医療機関もあるが、多くの高齢者や寝たきりの患者らは家族と“不通”の状況だ。

 同市、ケアマネジャー女性(57)は3月中旬、昨年10月から県南の医療機関に入院中だった80歳の母親を亡くした。インフルエンザまん延防止の面会禁止が解除されたが、新型コロナウイルスで再び禁止に。母親の状態は分からず、医療スタッフの説明も不十分で不満が募っていった。医師に訴えて亡くなる前に面会許可を得られたが、それも数日。女性は「面会禁止はやむを得ない」としながら、「残された人は家族の死を受け止めて生きていく。会えないなら会えないなりの情報がほしい」と訴える。

 そうした中、患者と家族の思いに応えようとする試みも。栃木市のとちぎメディカルセンターしもつがでは、スマホが使えない高齢者や寝たきりの入院患者に、院内電話の子機で家族と話せるよう対応を始めた。

 職員は「院内感染が発生すれば受けられるべき医療が受けられなくなる。これは是が非でも避けなければならないが、患者さんやご家族のストレスを少しでも軽減したかった」という。それでも対応は強い要望があった場合のみ。各医療機関は、感染防止対策と患者家族のケアとのはざまで頭を悩ませている。