被災し、市営住宅で暮らす中島さん夫妻。「早く落ち着きたい」と話す=8日午後、栃木市城内町2丁目

 栃木県に大きな爪痕を残した台風19号の直撃から、12日で半年を迎えた。被災者支援として一時的に無償提供されている公営住宅は、入居期間を原則6カ月としている自治体が目立つ。借家が解体され戻る家がない人や、建て替え工事の完成を待つ人など。被災者はそれぞれの事情を抱え、仮住まいを続けている。被災者からは「6カ月を過ぎた後も住みたいが、可能だろうか」と不安を募らせる声も聞かれる。

 「もう引っ越す力も元気もない。このままここに暮らし続けたいが…」

 栃木市城内町2丁目の市営住宅。避難所を経て、昨年12月からここで暮らす中島正夫(なかじままさお)さん(74)は、妻トキ子(こ)さん(82)とこたつを囲みながら不安を口にした。入居は原則6カ月で、5月11日に期限が迫っている。

 50年ほど暮らした同市柳橋町の借家は、床上浸水の被害に遭った。すでに解体され、今は更地になっている。戻る場所はない。トキ子さんが認知症を患っていることもあり、「また引っ越して環境が変わると、(妻の症状が)悪くなるかもしれない」。5月以降も住み続けたい意向を市に伝え、結果の連絡を待っている。

 引っ越す可能性を考えて、冷蔵庫はまだ買っていない。もらい物の炊飯器や電気ポットを置く棚は避難所でベッドとして使った段ボール。「台風から時間もたってきたし、早く落ち着きたい」と目線を落とした。

 佐野市大町の自宅が床上浸水した女性(73)も、市営住宅での生活が続いている。50年ほど暮らした愛着ある自宅は、建て替えのため3月に解体した。これから着工し、夏ごろに完成予定だ。「それまではここで暮らそうと思う。ここにも慣れたけど、早く(新居に)越したい」と話した。

 同市では入居期間を最長6カ月としているが、担当者は「被災された方の個別の状況を踏まえて、対応を検討したい」としている。

 一方、席巻する新型コロナ禍が、自宅再建に影を落とす事態も起きている。感染拡大に伴い、中国で製造されているトイレなどの部品供給が滞り、工事に遅れが出ているという。

 栃木市の関係者は「住宅メーカーに問い合わせたら、『トイレやキッチンの部品が足らず、住宅の引き渡しが遅れている』と言われた」とため息を漏らした。