永野川の堤防決壊現場で説明する長井さん。河川の改良復旧にとどまらない抜本的な対策を求めている=8日午前、栃木市薗部町3丁目

 県管理の13河川が破堤するなどした台風19号で、県は3月下旬、改良復旧事業の対象として5つの河川を発表した。対象河川の地域住民からは一定の評価とともに払拭(ふっしょく)しきれない将来への不安の声が上がり、外れた住民は地域の「置き去り感」への不満がくすぶる。台風の直撃から12日で半年。席巻するコロナ禍の陰で、河川の防災対策への「安心」は不透明なままだ。

 「改良復旧が決まったからといって、解決とはならない。豪雨が頻発する中、これからは自分の地区が安全ならいい訳ではない」

 永野川の決壊で甚大な被害を受けた栃木市柳橋町の長井和範(ながいかずのり)自治会長(76)は厳しい表情をみせる。永野川は総事業費が5河川のうち最高の約192億円で、2023年度までに集中的に河川の流下能力を高める改良復旧が行われる。

 「同じ豪雨が来たときに被害を防ぐ意味では改良復旧は一安心」と評価する一方、「一つの河川だけでなく、市全体のレベルで治水を考えないと永野川とは別の場所が被害に遭うだけではないか」。他の自治会と連携し、総合的な水害対策の検討を行政に求めている。

 「当時のまま、手つかず」。鹿沼市粟野地区の中山間部で水利組合長を務める岩出正行(いわでまさゆき)さん(66)は、氾濫した粟野川から出た土砂を見詰め、肩を落とす。

 昨年12月、地元有志で堤防のかさ上げなど改良復旧を求める要望書を県に出したが、なしのつぶてに終わった。今回、改良復旧の対象から外れた理由も、原形復旧の見通しや手法も説明がないという。「費用対効果も分かるが、田舎でも一人一人の被害の苦労は同じと分かってほしい」と訴える。

 大田原市の蛇尾川決壊で農地などが被害を受けた桜岡武雄(さくらおかたけお)さん(71)ら地元住民は台風直後、県などに堤防の強化を求めた。「行政は『原形に戻す』だけ。せっかく直すのだから住民の切実な思いを聞こうとか、前以上に良くしようという考えはないんだよ」と嘆く。

 県河川課は「改良復旧には被害の大きさや費用対効果、下流の整備状況など要件がある。今回要件に合う河川は改良復旧が認められている」と理解を求める。

 一方、氾濫した宇都宮市の田川と栃木市の巴波川については、対策工法の検討が続けられる。田川沿いの東塙田6区自治会長の北村正(きたむらただし)さん(77)は「県から情報がなく、住民から『どうなっているのか』と聞かれても答えられない」。新型コロナの状況を見極めつつ、説明会を求めている。