佐野市役所地下の防災備蓄倉庫。食料や水などは規定量を補充しているが、マスクは保管していない=7日午後

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、栃木県内市町は災害発生時の感染症対策の準備に頭を悩ませている。昨秋の台風19号のような大規模災害の場合、避難所がクラスター(感染者集団)の発生源となる恐れもあるためだ。防災備蓄品にマスクを加える準備や、避難所での対応方針について議論を始めた市町が一部にはあるものの、本格的な検討はこれから。識者は「まずは避難者自身が、こまめな手洗いなどを心掛ける必要がある」と指摘する。

 避難所のコロナ対策を巡って今月、国が自治体に対応を急ぐよう通知した。避難所に人が密集しないよう、指定避難所以外の避難所の開設やホテルなどの活用を検討することや、避難者の十分なスペースの確保などを求めている。

 台風19号でピーク時に3千人以上が避難した宇都宮市危機管理課は「学校の体育館以外に校舎の一部を避難所として活用できる」とし、密集をある程度避けられるとみる。ただし、避難所で配布できるマスクはなく、「備蓄品に加えるよう計画を修正したい」とした。

 避難者が約4200人と県内最多に上った佐野市危機管理課も、災害時の配布用マスクはない。確保に向け備蓄関係の予算の一部を割くことや、避難所の受付時に体調チェックを行えるかなど、庁内で議論を始めたという。

 足利市は、足利大本城キャンパスを緊急避難場所に活用できるよう協定を締結。台風19号を踏まえ、各市町は避難先を増やす動きを加速させている。ただ災害の種類や規模、範囲に応じ、三つの「密」を避けた避難所運営がどこまで可能かは未知数。ある市の防災担当者は「特に発災直後の避難所は資材も十分でなく、間仕切りも難しいのでは」と打ち明ける。

 国は通知でマスク、消毒液など必要品の提供を支援するとしている一方、手洗いやせきエチケットなど基本的な感染対策の徹底を求めている。獨協医大医学部の小橋元(こばしげん)教授(公衆衛生学)は「自治体は水道、せっけんなど基本的な対策ができる環境が避難所に整っているか確認してほしい。市民はこまめな手洗いや、布製でもよいのでマスクを持参するなど、現状の感染対策を避難所でも心掛けるよう習慣付けておいてほしい」と強調している。