作家の故北杜夫(きたもりお)さんは、信州の山に憧れて終戦の年に旧制松本高校に進み、北アルプス登山に頻繁に挑んだ。著書「どくとるマンボウ 青春の山」に詳しい▼その中で、山の遭難について「山は美しく壮麗で、われわれの精神に何物かを与えてくれる。しかし、山は怖い。山の怖さを本当に知って、その上で慎重に謙虚に山に登ってほしいと願わずにいられない」と書いている▼大田原高山岳部の生徒ら8人が、雪崩に巻き込まれて犠牲になった事故からきょうで3年。県教委は新年度から、高校山岳部の登山について、豊富な登山経験などを持つ「登山アドバイザー」を原則として全ての登山に帯同させる▼再発防止の一環として策定した登山計画ガイドラインが改定され、安全面により配慮した。学校安全課の伊沢純一(いざわじゅんいち)課長は「危険をゼロにはできないが、近づける必要はある。再発防止に終わりはない」と強調する▼日本スポーツ振興センターは昨年「高校山岳部 はじめの一歩」という冊子を作製し、山岳部がある全国の高校に配布した。那須雪崩事故をきっかけに編集したもので、登山の魅力やリスクを分かりやすく示している▼自然の中で仲間と汗を流して寝食を共にする登山は多くの若者の心を捉える。北さんは、その魅力とリスクの二面性を訴えた。改めて心に刻みたい。