1990年5月に女児が殺害、遺棄された足利事件で、殺人罪などに問われた菅家利和(すがやとしかず)さん(73)の無罪が宇都宮地裁の再審で確定してから26日で、10年を迎えた。事件は当時のDNA型鑑定の危うさや、虚偽自白に追い込む捜査手法が冤罪(えんざい)を生む構図を浮き彫りにした。現在、警察では冤罪を防ぐ対策が進み、進歩したDNA型鑑定は別の事件でも再鑑定の扉を開いた。一方、全国で誤認逮捕は後を絶たず、教訓を風化させない取り組みが求められている。

 警察庁が公表した足利事件の検証結果は「鑑定結果を過大評価し、犯人だろうと誤った認識をした」と結論付けた。捜査当時、同じ血液型で同じDNA型が出現する頻度は「千人に1・2人」。最高検の検証では、当時の足利市内で一致する男性が約100人いる精度だった。

 ズーム 1990年5月12日、足利市のパチンコ店近くで、保育園児松田真実ちゃん=当時(4)=が行方不明となり、翌日に付近の渡良瀬川河川敷で遺体が見つかった。県警は91年12月2日、殺人容疑などで菅家利和さんを逮捕。2000年7月、最高裁で無期懲役判決が確定した。再審請求中の08年12月、東京高裁がDNA型の再鑑定を決定。真実ちゃんの着衣に付着した体液と菅家さんのDNA型は一致せず、09年6月に菅家さんは釈放された。10年3月26日、宇都宮地裁の再審公判で無罪判決が言い渡され、即日確定した。

足利事件の主な経過
1990年 5月12日 足利市の松田真実ちゃん(4)がパチンコ店で行方不明になる
        13日 渡良瀬川河川敷で真実ちゃんの遺体が見つかる
  91年12月 2日 県警、菅家さん=当時(45)=を殺人容疑などで逮捕
        21日 宇都宮地検、殺人罪などで菅家さんを起訴
  93年 7月 7日 宇都宮地裁が無期懲役の判決。翌日、菅家さんが控訴
  96年 5月 9日 東京高裁が控訴棄却。翌日、菅家さんが上告
2000年 7月17日 最高裁が上告棄却を決定。無期懲役判決が確定
  02年12月25日 菅家さん、地裁に再審請求
  08年 2月13日 地裁、再審請求を棄却。5日後、弁護団は即時抗告
     12月24日 高裁、即時抗告審でDNA型再鑑定を正式決定
  09年 5月 6日 再鑑定で、菅家さんと真実ちゃんの衣類に付いた
            体液のDNA型が一致せず
      6月 4日 東京高検、菅家さん=当時(62)=を釈放
        23日 高裁、再審開始を決定
  10年 3月26日 地裁、再審無罪判決