藤原秀郷(ふじわらのひでさと)が城を築いたとされる佐野市の唐沢山は、頂上から関東平野が一望できる自然豊かな山だ。ここを舞台に、キャンプなどの野外活動を通じて友情や行動力を育んだのが「唐沢子ども会」である▼発足は終戦間もない1950年。子どもたちの健全な育成を願う山頂の神社の宮司に、安佐地区の教育界が賛同してできた。学校推薦を受けた小中学生が地区の子ども会のリーダーとなるべく集まり、多い時は800人を超えた▼最大の特徴は、会長ら役員や大勢の指導員を、管内の学校の先生が務める点だ。活動は週末を中心に年10回以上。前日から山に登り、指導計画を練りながら、教員としての力を培った▼キャンプはよく悪天候に見舞われたという。たくましさが養われる一方で、危険と隣り合わせの時もあったに違いない。少子化や教員の働き方改革の流れもあり、今月をもって70年の歴史に幕を閉じる▼佐野支局に勤務した10年ほど前、行政や経済などの第一線で活躍する人たちと歓談すると「昔、唐沢子ども会に入っていましてね」と懐かしそうに話す人が結構いた。皆、少年の顔に戻り、笑顔を浮かべた▼今の時代、同じような組織を再びつくるのは容易ではない。だからこそ、郷土を愛する次世代の育成という精神を受け継ぐのは、会を巣立った大人たちの責務だろう。