実物の10倍はあろうか。高齢の女性の顔が、巨大な画用紙いっぱいに描かれた絵が小紙に載った。鉛筆で克明にしわが描き込まれ、モノクロ写真と見間違える精密さだ。作者は高校生で、しかも個展を開いていると知り、興味をそそられた▼制作したのは足利工業高3年の早川温人(はやかわはると)さん(18)。聞けば、絵を始めて1年とか。2年生になって入部した写真部では昨夏、全国の高校生が腕を競う「写真甲子園」で3位相当の賞に選ばれるなど、次々と才能を開花させている▼祖母の和代(かずよ)さん(76)をモデルにした。看護師で生活がすれ違いがちな母を助け、育ててくれた。「このしわは、僕の面倒を見ながら刻まれていったもの。感謝の気持ちを込めた」▼作品は、真っすぐ前を向いた強いまなざしと、孫に日々笑いかけて生まれた無数のしわが印象的だ。飾ったのはわずか3点。制作するたび自分の成長を実感するから「自信を持って見せられる物だけを飾った」と話す▼先生を通じて会場を知り、開催の機会を得た。知らない人を含め多くの人が訪れ、激励の言葉をくれたという。いろいろな表現方法を試したいと今春、群馬県の美術系の短大に進む▼早川さんの成長の跡が将来、しわとなって現れる頃にはどんな大人になっているのだろう。10代の無限の可能性を感じさせる個展だった。