「杞憂(きゆう)」という言葉がある。中国の杞の国の人が、天地が崩れて落ちるのを憂えたという故事に基づくもので、取り越し苦労という意味である▼羽田空港着の飛行機に乗ってこの言葉が思わず浮かんだ。日没に向かう時間帯で、普通であれば東京湾上空を通る飛行ルートのはずが、都心に向かっている。眼下には住宅やビルが広がり、東京タワーや国立競技場が目に入る▼日が暮れて明かりがともると宝石箱のような風景になった。美しい眺めに目を奪われたが、人口密集地の上を飛んで大丈夫なのかと心配になった。この新ルートは、東京五輪・パラリンピックに合わせて羽田発着の国際線を増やすために設けられた▼その「実機飛行確認」が先月初めから中旬に行われ、たまたま乗り合わせたことが後日分かった。国土交通省は騒音について「東京都港区の小学校で幹線道路沿いに相当する」といった測定結果を公表。騒音対策に取り組むほか、落下物対策は世界に類を見ない厳しい基準で、対策を強化しているという▼新型コロナウイルス感染症の拡大で国際線は大幅に減便となっている。さらに市民グループなどの反対もあるものの、国は予定通り今月末から新ルートを導入する▼国際競争力強化のための機能強化が目的と言うが、事故のリスクはどうなのか。杞憂であれば幸いだ。