東京電力福島第1原発事故で一時全村避難となった福島県飯舘村は、山あいにある自然豊かな村だ。「手間暇惜しまず」「心を込めて」を意味する方言の「までい」な暮らしが息づいてきた▼大田原高出身の溝口勝(みぞぐちまさる)東京大大学院教授は、そうした人情にほれ込んだ一人。村には大量の放射性セシウムが降った。農地除染のため、土壌物理学者として現地入りしたが、一段落した今も毎週、村で復興に向けた活動を続ける▼近年力を入れるのは、事故をよく知らない世代の教育だという。6千人いた村民のうち戻ってきたのは1200人。「このままでは村が崩壊する」と危惧する▼セシウムについて正しく理解してもらおうと、自ら「ドロえもん博士」を名乗って同県内の小学校などで出前授業を展開。土に付いたら離れず、雨が降っても地下水などにしみ出ない特徴を、簡単な実験を通じて解説してきた▼今度は親子で読める小冊子「土ってふしぎ!?」にまとめ、電子図書や英語版も作って発信する。「皆、怖がりすぎ。正体が分かれば、どう対処したらよいか見えてくる」▼今日で東日本大震災から9年。「復興」がテーマの東京五輪はあと4カ月に迫る。今月26日には聖火リレーが福島をスタートし、本県が引き継ぐ。ドロえもん博士が願う、風評に惑わされない真の復興を広めたい。