パワーボールを武器の一つにする伊藤。直球は時速70キロにもなる=11日午後、都内

東京パラリンピック出場を目指す伊藤

パワーボールを武器の一つにする伊藤。直球は時速70キロにもなる=11日午後、都内 東京パラリンピック出場を目指す伊藤

 視覚障害者の球技で「静寂の格闘技」とも呼ばれるゴールボールで、栃木市出身の茨城県盲学校教諭伊藤雅敏(いとうまさとし)(37)が東京パラリンピック出場を目指している。男子代表6人のうち既に4人が内定し、残り2人は3月に決まる見通し。時速70キロ近いパワーボールと、研ぎ澄まされた聴覚が武器の伊藤は「世界と戦う姿を見せたい」と、初の大舞台に向けて練習に汗を流している。

 「クワイエットプリーズ(静かに)」。2月中旬、都内の体育館に審判の声が響く。たちまち静寂に包まれるコート。伊藤から放たれた直球は相手選手の体を乗り越え、ゴールへ吸い込まれた。伊藤は「対戦相手の位置は、音で見る」と力を込める。

 幼少期から運動が好きで、中でも野球などの球技が得意だった。だが、「視界の上から突然影が降りてきた」。右目の視力は小学4年、左目は中学1年で失った。進行性の「網膜変性症」という病が原因だった。

 ゴールボールとの出合いは栃木県盲学校中学部3年の体育の授業。野球や卓球は見たことがあったが、「見たことがない」競技だから想像するのが面白かった。激しいボールの投げ合いや、緩急を織り交ぜた球種の駆け引き。国際的な競技とも知り、「目指すなら世界だ」とのめり込んだ。

 ゴールボール 視覚障害者が対象のパラリンピック正式種目。バレーボール大のコートで1チーム3人ずつが鈴の入ったボールを投げ合い、ゴールに入った得点を競う。公平性を保つため選手全員が目隠しの「アイシェード」を着ける。