台風19号で甚大な被害にあった栃木市内では、一部で家屋の解体が進み更地が目立ってきた=2月上旬、栃木市内

 昨年10月の台風19号で住家被害が県内最大の約8千棟に上った栃木市で、台風後の約4カ月間で人口が大幅に減っている地区が複数あることが13日までに、市への取材などで分かった。市中心部を含め、特に浸水被害が大きかった地区では100人以上も減少。高齢化も著しく、自治会関係者らからは「コミュニティーを維持できなくなる」と不安の声が漏れる。

 市の住民基本台帳によると、台風で浸水被害が大きかった地区の人口減少は、2019年9月末~20年1月末の4カ月間で柳橋町が61世帯105人、薗部町は1~4丁目で計84世帯156人、大平町富田は59世帯126人。昨年の同時期はいずれも10人程度の増減だった。市によると住民票を移さず転居した場合も考えられ、減少数はさらに上回る可能性もあるという。

 地区内の9割程度が浸水したとされる市中心部の柳橋町は、高齢者を中心に地区外へ転居。被災家屋の解体も進み、更地が目立ってきている。自治会は転居者をサークル活動に誘うなど、つながりがなくならないよう努めているという。

 一方、同地区は高齢者が45%以上を占め、自治会役員のなり手も限られる状況。台風後は「自分が班長の時に水害が起きたら対応できない」と、自治会退会を求める人も出てきているという。長井和範(ながいかずのり)自治会長(76)は「また同じような水害が起きたらどうなるか。高齢者は家を建て直してまでここに住むとはならない。更地がさらに増え『空白地帯』になってしまう」と危惧する。

 近年新興住宅が増え、人口も増加傾向にあった大平町富田。地区外へ転居したのは主に被災した1人暮らし高齢者やアパートの住民だ。新興住宅の住民らは再建を目指しているが、同所で長年暮らす自営業岡部明哲(おかべあきのり)さん(63)は「みんな安全だと思って来た。何回もやられちゃえば、うんざりして出て行っちゃうかもしれない」と声を落とす。

 市全体では同時期、89世帯530人の減少だった。各自治会を束ねる市地域づくり推進課は「地域力の低下は台風以前からの課題だったが、今回の被害でさらに拍車が掛かった。市としても、地域のつながりについて改めて考えなければならない」としている。