窓口で公費解体について相談する男性(手前)=12日午前、栃木市役所

 昨年10月の台風19号で被災した半壊以上の住宅などの解体を自治体が担う「公費解体」の申請受け付けが、県内でも行われている。台風19号が本県を直撃してから4カ月となった12日も、栃木市の窓口には市民らが申請や相談に訪れていた。「愛着ある家だけど仕方ない」。被災した人々は複雑な思いを抱えながらも、生活再建へ向けて一歩ずつ進んでいる。

 「迷っていたけど、取り壊そうと思う。また水害が起こるかもしれないし」

 同日午前、栃木市大平町下皆川、女性(68)は、申請に必要な書類の相談のため市役所へ足を運んだ。生まれ育った築120年ほどの自宅は1階部分が床上浸水した。タンスや食器棚などが水に漬かり「今日はどこを片付けようか」と考えながら、毎日を過ごしたという。今も床板は所々、剥がれたままで、床下の泥も出せていない。

 30年近く前、同居していた父親に家の建て替えを提案した際、「壊すのはもったいない」と反対された。それを思い出すと「先祖代々大切に守ってきた家。それを壊すのは…」との思いもよぎるが、「むなしいし寂しいけど、今回がいい機会かもしれない」と前を向く。

 同市薗部町3丁目の自宅が被災した女性(70)は「古い家なので修理して住むのは難しい」と親族らと話し合い、解体を決めた。「家の中は泥だらけで家具も家電も全部駄目になった。まさかここまでの被害になるとは」と振り返る。今は市内のアパートに住む。息子家族や孫が頻繁に集まり、にぎやかだった自宅での日々が懐かしい。

 現在、申請のための書類を準備しているという。「今は無事に(解体が)終わってほしいと思うけど、いざ空き地になったら寂しいだろうな」とつぶやいた。

 県内では、栃木市が3日から公費解体の受け付けを始め12日現在、申請が18件、相談が約250件あった。4日から受け付けている佐野市は12日現在、申請19件、相談約130件。両市とも受け付けは3月末までで、栃木市は約400件、佐野市は約350件の申請を見込んでいる。今後、鹿沼市も受け付けを始めるという。