宿泊客の不安をなくそうと、マスクを用意した旅館=5日午後、那須塩原市塩原の旅館「彩つむぎ」

 新型コロナウイルスによる肺炎拡大を受け、栃木県内温泉地などの旅館やホテルに影響が出始めている。中国人の宿泊の有無などを問い合わせて宿泊をキャンセルする客もおり、キャンセルが10件近くに上った宿泊施設もある。各施設ともアルコール消毒の徹底など対策に躍起で「早く終息してほしい」と気をもむ。目立った影響がない観光地でも「日本人が出掛けるのを控えるようになるのではないか」と懸念の声が上がる。

 「健康に関することなので、お客さまの判断を尊重せざるを得ない」。那須町湯本の「ホテルサンバレー那須」の担当者は、キャンセル客の増加に「仕方ない」と肩を落とす。

 1月下旬から中国人の宿泊客に関する問い合わせが出始め、現在は1日に数件ある。日本在住の中国人客の宿泊でも「泊まっていることは伝えないと」と答えた結果、宿泊キャンセルは10件近くに達した。

 同町内の別の大型ホテルも「問い合わせは日に日に増えている」という。いずれの施設でもフロントなどを中心に従業員のマスク着用や、アルコール消毒の徹底など入念に対策を施す。

 那須塩原市塩原の「松楓楼松屋」でも同様の問い合わせやキャンセルがあった。鬼怒川温泉のホテルでも1月下旬から、問い合わせが増加。多い時で20件ほどあり、担当者は「うちキャンセルは1割弱」と話す。

 2件のキャンセルがあったという日光市安川町のホテル「日光千姫物語」。客同士が接しないよう朝食や夕食は部屋、料亭で提供し、バイキング方式はやめている。根本芳彦(ねもとよしひこ)社長(62)は「できることで対応するしかない」と厳しい表情を見せる。

 対策に追われる関係者が懸念するのは「風評」だ。

 もともと中国からの客が少なく「影響は出ていない」という鬼怒川温泉の旅館関係者は「今後客足に影響が出るのが怖い」と漏らす。日光東照宮では中国人団体客に加え、理由は不明だが日本人のツアーの延期、中止が2件出ている。湯沢一郎(ゆざわいちろう)権宮司(59)は「日本人が出掛けるのを控えるのが心配」と受け止める。

 那須塩原市塩原の旅館「彩つむぎ」では3、4日前から、希望する宿泊客のために、蓄えていたマスクの販売を始めた。女将の君島理恵(きみしまりえ)さんは「新型肺炎拡大は怖いが、他のウイルスと同じように冷静に対応したい。少しでも安心して宿泊してほしい」と話した。