「桃栗三年、柿八年、柚子(ゆず)は九年の花盛り」。安倍晋三首相が新年のあいさつで引用したことわざで、「柚子までは責任を持って大きな花を日本に咲かせたい」とも述べた▼政治家が使ったフレーズの言外の意味をあれこれと推測するのは政治取材の常であり、来年9月末までの自民党総裁任期を全うし、ささやかれる年内退陣論を否定したと受け止められた▼ことわざは、何事も成就するまでには相応の年数が必要ということを意味する。そのまま受け取っては、既に憲政史上最長の在任期間となっても多くの課題が達成できていないことの言い訳を許すことになる▼物価上昇率2%、北方領土返還、拉致被害者の帰国、少子化克服…。安倍首相自ら掲げたこれらの目標は見通しが立っていないどころか、達成できると考えている国民はほとんどいないというのが現状だ▼目標を掲げた時、安倍首相の総裁任期は2018年9月までだった。「柿八年」や「柚子は九年の花盛り」と言えるようになったのは党則を改正して連続3選を可能にして期限を延ばしたからだ。党内には今、4選論や再々登板を予測する向きもある▼三省堂の「新明解 故事ことわざ辞典」によると、「柚子の大馬鹿(ばか)十八年」という言い方もある。将来、安倍政権を振り返る時、こっちが使われないことを祈りたい。