県藤楓協会と県が作製したハンセン病療養所入所者証言録の書籍(左)とDVD

 ハンセン病療養所入所者の高齢化が進む中、本県出身の入所者が国の隔離政策の下で受けた偏見や差別の体験を後世に伝えようと、県藤楓協会と県は18日までに、書籍とDVDで「ハンセン病療養所入所者証言録」を初めて作製した。家族からも偏見の目で見られたことや、優生手術で精神的・肉体的苦痛を受けたことなどの体験が克明に記されている。人権教育資材として県内の中学、高校、図書館に配布したほか、書籍は県ホームページでも公開している。

 書籍はA5判130ページ。多磨全生園(東京都東村山市)の入所者5人と、栗生楽泉園(群馬県草津町)の入所者3人の体験談を聞き取り形式で掲載した。DVDは教材用が18分、一般用が43分で、全生園入所者3人の証言を収録した。各540冊・枚作製し、県内の図書館や県が貸し出す。

 全生園の男性=聞き取り当時(93)=は21歳の時、足の神経痛で勤務先を退職。親戚の勧めで同園医師の診察を受け入所し、注射治療を受けた。退所後は職に就いたが、病気に気付く人もおり、差別語で呼ばれることもあった。実家に帰ると、結婚したばかりの姉に「あんたはいないことになっている」と言われ、知人との接触も避けたという。

 全生園の別の男性=同(94)=はハンセン病と診断され、「誰も分からないように死を選ぼうかと思った」と振り返る。「優生手術を受けるときの精神的・肉体的苦痛は大変なものだった」と吐露した。

 また、楽泉園の男性=同(74)=は「こういう差別だけは、誰がいつどうなるかも分からないから、差別はしない道を進んでもらいたい」と、差別のない社会を望んだ。

 同協会事務局の県健康増進課は今後、福祉イベントでハンセン病関連ブースを設ける際、映像を流すなど普及啓発したい考え。

 同課によると昨年12月1日現在、本県出身の療養所入所者は群馬、東京、静岡の3都県に計13人で、平均年齢は86・6歳。記録が残る1954年3月時点では、6都県に計166人いた。