「大阪流に言うと、絶好の金もうけのチャンスなんです」。リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞、帰国後に東京であった記者会見で旭化成名誉フェロー、吉野彰(よしのあきら)さんの口から、そんな言葉が飛び出した▼地球規模の環境問題が深刻化する中、「環境に優しくて安い製品を日本から発信したら、世界を制覇できますよ」と語ったのだ。そういう「攻めの姿勢」で進まないと持続可能な社会は生まれない、とも強調した▼画期的な技術を生むための基礎研究に消極的な日本企業への忸怩(じくじ)たる思いがあるのかもしれない。1990年代後半以降、時間のかかる基礎研究から撤退する動きが広がった▼企業の研究力低下は大学にも影を落とす。研究を担う博士課程の学生が減り、研究力低下の一因となっている。「日本の科学技術の地位が20年続けて低下したのは近代になって初めてでは」と安宅和人(あたかかずと)慶応大教授▼内閣府が主導する巨額の研究事業も、産業側が自ら取り組めばいいものが目立つ。金融・保険業を除く全産業で積み上がった463兆円もの内部留保は何のためか▼民間が取るべきリスクを政府が引き受けている現状では、より実用化まで距離があるような研究を、将来のためにたくさん育てるという、国のすべき仕事が制約される。新たな年、日本は変われるだろうか。