漫画「あしたのジョー」連載開始50周年を記念し、6日まで東京都墨田区の東京スカイツリータウン・ソラマチで開かれている「あしたのジョー展」(講談社主催)。開幕に先立って開かれた報道内覧会で、作者のちばてつや(文星芸術大教授)が作品を振り返った。
−50周年を迎えるに当たり、どのような思いですか。
「『えっもう50年もたったの?』という感じですね。ラストシーンがなかなか決まらなくて苦しんだことを、つい2、3年前のことのように思い出します」
−展覧会を見てみてどうですか。
「アニメーションの原画とか、私も初めて見るものがたくさんありました。ここ(開催地)は私の小学校がすぐ近くで、すごく懐かしい場所。そんな自分のふるさとみたいな場所でこんなに素晴らしい展覧会をやってくれてうれしいし、(原作者の故)梶原一騎(かじわらいっき)さんも喜んでくれていると思います」
−今回展示されている原画を自身が選びましたが、選ぶのは難しかったでしょうか。
「描いた本人は夢中になって梶原さんと作り上げてきたのですが、描いた後はもう読者のものなんですね。読者がみんなで選んでくれるものだと思うし、作者が自分の思い出でそれを語ってしまうと、違うことになってしまうかもしれない。だからあんまり(コメントは)読まないで流してほしい」
−ちばさん自身は「あしたのジョー」をどういう作品だと捉えていますか。
「スポ根じゃなくて、人間の本当の葛藤とか生きざまを描く作品。挫折する人間、お日様の下じゃなくて、暗い部分でしか生きられない人たちが(『あしたのジョー』には)たくさん出てきます」
−好きなキャラクターは誰ですか。
「描いていて楽しかったのはドヤ街の子どもたち。いろんな意味で親しみを持てるのは力石徹とかドヤ街の人たちです。ジョーは『こんなふうに生きられたらいいなあ』とは思うんですけど、難しいだろうなと思いながら描いていました」
−あしたのジョーが今も愛されている理由をどう考えますか。
「人間の心とか葛藤、そういう日本人の変わらない気持ちや心を描いてきたこともあるんでしょうけど、アニメーションがすごく面白かったんです。私の漫画を読んでない『あしたのジョー』ファンってたくさんいると思うんです。アニメを見て感動したから原作を読んで『面白かったよ』って言ってくれてほっとしました。アニメとか、いろんな人たちが協力して作ってくれたおかげで続いてきた人気なんだろうな。それがこう50年も続くって言うのは、本当に皆さんのおかげだと思います」