「地域住民の安全を守れ」-。横浜市都筑区の住宅地にこんなのぼり旗が林立する。筆者の知り合いが運営する障害者のグループホームに反対する住民たちが掲げたものだ▼知人や弁護士によれば、住民たちは「精神障害者らによって子どもたちの安全が脅かされる」「地価が下がる」などと主張する。そこには共生の視点はみじんもなく偏見が渦巻く。入居者は言われのない差別意識に困惑を隠せないでいる▼相模原市の「津久井やまゆり園」で19人の命が奪われた事件の公判が、横浜地裁で始まった。「重度障害者は生きる価値がない」。植松聖(うえまつさとし)被告の考えは、地域社会にはびこる差別・偏見意識が凝縮されたものではないか▼県障害福祉課によると、全国では住民の反対運動が散見されるが、本県では目立った動きはないという。だがこの先は分からない。そもそも2016年に施行された障害者差別解消法では、国や自治体が施設を認可する際には周辺住民の同意を求めない、と定められている▼言い古されたことだが、誰でも病気やけが、高齢化で障害者になる可能性はある。想像力を働かせれば、差別する側は差別される側になり得ることに気付く▼植松被告の公判は決して人ごとではなく、一人一人の意識の在りようも問われている。共生という言葉の重みをかみしめたい。