「独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である」。1969年、当時は成人の日だった1月15日に、立命館大学生の高野悦子(たかのえつこ)が日記に残した言葉だ▼高野はその5カ月後に亡くなった。日記は71年、「二十歳の原点」として出版され、ベストセラーになった。旧西那須野町(現那須塩原市)出身。宇都宮女子高を経て同大に進んだ。目がくりっとした、小柄な人だったという▼成人の日を前に、久々にページをめくった。学生運動の嵐の中、自己とは何かを模索し、社会を変えられる可能性を信じて行動し、理想と現実のギャップに打ちのめされ、葛藤する日々がつづられている▼現代と違い、さまざまな情報が容易に手に入るスマートフォンなどのツールはなく、時代背景も異なる。自己を確立しようともがく姿は正直、重い。今年、県内で成人式を迎える2万人余の若者が読んだらどう受け止めるのか▼ただ行間からにじみ出る、みずみずしくて純粋な、若者らしい感性は今なお新鮮で胸を打つ。没後50年の昨年は、なじみやすいコミック版も発行された▼きょう12日は多くの市町で成人式が行われる。懐かしい友人と旧交を温めるシーンが繰り広げられることだろう。新成人には、内面を見つめ直し、自分にとって二十歳の原点は何かを見いだす日にしてほしい。