被災を乗り越えて開園したハウスでイチゴ狩りを楽しむ親子ら=8日午前、佐野市

 昨秋の台風19号は、県産イチゴの魅力を発信する観光農園の営業にも影響を及ぼし、被災地では今季の開園時期が遅れている農園が見られる。二つある農場のうち一つが浸水した佐野市植下町の佐野観光農園は、予定より約2週間遅れで全面開園にこぎ着けた。一方で、足利市大久保町のJA足利アグリランドいちご農園はいまだ道半ば。例年より約2カ月遅い2月中旬ごろのイチゴ狩り開始を目指し、奮闘が続く。

 ハウス49棟でとちおとめやスカイベリーを栽培する佐野観光農園の第一農場には8日、イチゴ狩りを楽しむ親子連れの姿があった。

 約3カ月前、豪雨であふれた水が流れ込んだ場所だ。ほとんどの苗が水に漬かり生育が遅れた。先月上旬の開園には間に合わなかったものの、関哲夫(せきてつお)取締役農園部長は「苗が枯れてしまうのではないかと不安だった。何とかお客さんを迎えられた」と胸をなで下ろす。

 経験したことのない水害だけに「全てが試行錯誤」だった。一刻も早く水を取り除くためにポンプで水をくみ取り、葉に付いた泥を落とした。苗を守るために殺菌剤で消毒したり栄養剤を与えたり、JA佐野の協力を得ながら従業員16人が復旧作業に当たった。

 その成果もあり、ほとんどの苗が実を付けた。「例年通り甘くておいしいイチゴができた。多くの人に食べてほしい」と従業員たちは胸を張る。報道で被災を知った来園者から掛けられる励ましの言葉も力になっているという。

 一方、JA足利アグリランドいちご農園のハウス内ではまだ白い花が咲いている。本来なら赤い実を付けている時期。先月中旬に開園する予定だったが、台風で大量の泥水がハウスに押し寄せ、大幅に生育が遅れた。

 開園は2月中旬ごろになる見込み。秋草照男(あきくさてるお)常務は「1日に30件ほどイチゴ狩りの問い合わせがある。早く期待に応えたい」と話す。開園の遅れや人件費の増加など被害額は1千万円に上る可能性があるという。