「これは詰んだ」。安倍晋三(あべしんぞう)首相が主催する「桜を見る会」を巡り、首相本人や菅義偉(すがよしひで)官房長官、官僚の説明で矛盾が露呈するたびに、SNSにおどったレトリックだ▼広辞苑の「詰む」の項には「将棋で、駒の逃げ場がなくなる。また、王将の逃げ場がなくなり負ける」とある。しかし、投稿者が王将になぞらえた安倍首相が、先の臨時国会で負けを認め「投了」することはなく、実態解明は時間切れとなった▼将棋の公式戦なら持ち時間を超えた遅刻は不戦敗となる。しかし今の国会は、首相が最後まで姿を現さなくても負けないどころか、疑惑を隠しおおせて「逃げるが勝ち」の様相である。持ち時間を使い切ったのはむしろ野党の側かもしれない▼ただ、「桜騒動」は収まっていない。加えて、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡んだ与党議員の逮捕などもあり、今月末からの通常国会は大荒れ必至だ▼新年度予算案の審議もあり、首相も答弁に立たないわけにはいくまい。いよいよ窮まれば、劣勢の将棋盤をひっくり返すような衆院解散が首相の頭をよぎるかもしれない▼だが国会や報道が次々にさらした不都合は、定跡に程遠い棋譜のように有権者の心証に上書きされたはずだ。それはシュレッダーでも細断できない。首相の決断には相当の覚悟が要ることだろう。