地方の暮らしでは、車は単なる移動手段にとどまらず、買い物や通院などの日常を支えてくれる。特に足腰が弱くなった高齢者にとって、車のない環境は想像できないだろう▼警察庁は、安全機能を備えた安全運転サポート車、いわゆる「サポカー」の運転に限定した免許の創設と特定の違反歴がある高齢者に対する「実車試験」(運転技能検査)の導入を打ち出した。次期通常国会への道交法改正案の提出を目指している▼警察庁が制度設計で最も頭を悩ませたのが、実車試験の対象だ。安全を追求するなら75歳以上や80歳以上の全員を一律に対象とすれば、運転が危ないドライバーが漏れることはなくなる▼一方で対象の範囲を目いっぱい広げると、軒並み権利を剥奪することになりかねず、地方の高齢者はたちまち生活に支障を来す恐れがある▼安全と生活を比較考量した上で出した答えが「信号無視など特定の違反歴」。75歳以上の運転者のうち、過去3年で何らかの違反があったのは約2割で、特定の違反歴を条件にすると対象はさらに少なくなり、実車試験をクリアできず免許更新できないのは数%とみられている▼実車試験の狙いは、間違いなく運転が危険な高齢ドライバーに悲惨な事故を起こす前に運転を卒業してもらうことである。数%はその基準のラインとなるだろう。