信仰心はあつい方ではないものの、新年を迎えるとけじめとして神仏に向き合いたくなる。とりわけ仏像鑑賞を趣味としており、格好の仏像がないかあれこれ思いを巡らすのも楽しい▼誇れるほどの遍歴ではないが、ベストを問われれば、滋賀県長浜市の向源寺にある国宝「十一面観音立像」を挙げたい。平安初期の作とされるヒノキの一本彫り。美しい体躯(たいく)はいつまでも見飽きることがない▼関西の奥深い仏像文化はさておき、仏像に詳しい元県立美術館副館長の北口英雄(きたぐちひでお)さん(81)に本県のお薦めを聞いてみた。考えた末の返答が、宇都宮市の大谷寺本尊の「千手観音立像」だった▼奈良時代後期の作である重要文化財の磨崖仏は、石心塑像という技法を取った国内唯一の例だという。もろい大谷石から彫り出した石仏に粘土などを盛り付けた。北口さんいわく「技術的にも造形的にも全国に誇れる逸品」だそうだ▼大阪出身の北口さんは母親の影響で幼い頃から仏像の魅力にはまった。「いい仏像に向き合うと自然に合掌する気持ちになるでしょう」▼最近、文化財調査研究の集大成となる「栃木県の仏像・神像・仮面」を刊行した。巻末で訴えるのは「当初の姿で後世に伝え残す」文化財保護の原点だ。公文書を簡単に破棄する風潮のわが国にあっては極めて難題に思ってしまう。