道路が冠水する中、現場に向かう消防車=10月12日午後11時40分

 【栃木】台風19号が本県に最接近した10月12日から13日にかけて、市消防本部に単純計算で平常時の18倍を超える119番があったことが、29日までに同本部への取材で分かった。隊員が現場に近付けず救助に時間がかかったケースもあり、同本部は自主防災の重要性を強調している。

 同本部が12日午後3時~14日午前0時の33時間に受けた119番は、救助依頼や土のう積みの要請など758件。平常時は1日(24時間)平均30件ほどで、単純計算すると、119番の件数は平常時の18倍を超えた。12日10時~13日午前1時にかけて急増し、12日午後10時台は133件に上った。

 同本部は全職員約180人が出勤し、通信指令センターは通常の倍の6席で対応した。しかし「電話を切ったらすぐ次の電話。常に電話が鳴りっぱなしの状態だった」(野口貴司(のぐちたかし)司令補)。

 同センターは、緊急度を判定し優先順位を付ける「コールトリアージ」という対応を取った。妊婦や持病がある人など、緊急性を要する場合を優先し、それ以外は「2階に逃げてください」と垂直避難を呼び掛けたという。

 現場でも緊迫した状況が続いた。水の流れが激しく救助用ボートの制御が効かなかったり、隊員が流されて別の隊員に助けられたりした場面もあったという。高橋良明(たかはしよしあき)特別救助隊長は「『このままだと桁違いの死者が出る』と思いつつも、現場に行けないジレンマがあった」と振り返る。要請から数時間後に救助された人や、電柱によじ上り救助を待つ人もいたという。

 同本部は13日までに85件の出動で83人を救助、消防団も58人を救助した。石田栄(いしださかえ)消防長は「防災機関の活動にも限界がある。危機感を持ち、早めの避難を心がけることが大切」と強調した。