2002年製作の米映画「アバウト・シュミット」は、66歳で定年退職した男の悲哀を描いた名作である。ジャック・ニコルソンが、妻に先立たれ一人娘も慌ただしく嫁いでしまった父親の孤独や切なさを見事に演じきった▼同年代に差し掛かり改めてDVDで見直すと、当時は何げなく見過ごしたシーンが心にしみてくる。例えばこんなせりふ。「歴史の中でわれわれはとても小さな存在だ。それでもせめて何かの役に立てたらと願う。だが私は一体何の役に立てるだろうか」▼第二の人生を踏み出そうというその時に、筆者もきっとこんな思いに駆り立てられるような気がしてしまう。どう充実した時間を過ごせるだろうか▼宇都宮市出身の歌手森昌子(もりまさこ)さん(61)の「ラストコンサート」が故郷の地であった。森さんとは同い年でもあり、数々のヒット曲に人生の折々がよみがえってくる。歌唱力は健在で引退にはまだ早すぎる気がしないでもない▼だが、引退後の「自分で予定を決められる『自由な時間』を楽しみたい」という意思は固い。多くの人々の記憶に残る歌手人生にやり残し感はないのだろう▼アンコールで披露した「人生に乾杯」の歌詞には「いろいろあるわ人生は。不思議な出会いを探しましょう」とある。意義ある第二の人生を送るための大切な言葉と受け止めたい。