県内最高齢の聖火ランナーに選ばれた箱石さん=12月、那珂川町谷川

 1916(大正5)年生まれ。夫を太平洋戦争で亡くし激動の昭和を生き抜き、平成の30年間も理容師としてハサミを握り続けた。栃木県那珂川町谷川、箱石(はこいし)シツイさん(103)は県内最高齢ランナーとして令和の世に平和の灯を掲げる。

 「ただただびっくりして言葉が出ない」。聖火ランナーに選ばれた今の、率直な感想だ。前回の東京五輪時は47歳。女手一つで2人の子どもを育てる真っ最中だった。「余裕無く働いていたので、東京五輪の記憶はあまりないんです」

 椅子が1脚だけ残る「理容ハコイシ」には、県外も含め月に7、8人の客が訪れる。バリカンやハサミ、カミソリを操る姿に、年齢の衰えは一切見えない。

 健康の秘訣(ひけつ)は、30分ほど要する自己流の体操を毎日朝晩行うこと。大豆や肉、魚をバランス良く食べ、散歩も欠かさない。庭の畑で野菜作りも続ける。

 身長138センチと小柄だが幼い頃はリレーの選手に選ばれるほどの俊足だった。聖火リレー本番に向けスクワットで足腰を鍛え、トーチを持つ腕力もつけたいという。「年寄りでもやれるというところを見せて、高齢者に元気になってほしい」と自らを奮い立たせる。

 来年は戦後75年の節目の年。夫の戦死を知った直後、子どもとの心中を考えるまで追い込まれた。「戦争ほどつらいことはない。平和が続くことを願って走りたい」。箱石さんの言葉に力がこもった。