床上浸水した自宅1階のリフォーム工事の様子を確認する平野栄一さん、みどりさん夫妻=12日午後、佐野市大橋町

 台風19号の本県直撃から12日で2カ月。浸水被害で壊れた家に住み続ける「在宅被災者」は県内でも少なくない。1階のリフォーム工事が終わらず、2階で寝泊まりするなど日常を取り戻せずにいる。自宅の再建を諦め、他の場所に移転する動きも進んでいるとみられ、被災地域の住民からは「災害で人が減るなんて寂しい」との声も漏れる。

 「家財道具などを買い直して、生活はやや落ち着いてきた」。思川の堤防決壊で2階建て住宅が床上浸水した鹿沼市口粟野、パート従業員斎藤弘志(さいとうひろし)さん(58)は気丈に話す。この2カ月間、妻や息子2人と2階で寝泊まりし、生活再建に奔走してきた。

 1階は床板の一部を剥がし、流れ込んだ泥をかき出した。床下の基礎部分が乾燥するまで、リフォーム工事には入れない。濁流で車庫と物置も倒壊し、庭の一部は崩れたまま。廃車になった車4台は買い替えた。再建作業に時間を取られ、仕事に復帰できずにいる。

 河川工事の行方も気に掛かる。「決壊箇所を直しても、大雨でまたあふれるのではないか」と不安は消えない。

 「何とか(ゆったりとした)正月を迎えられそう」。佐野市大橋町、会社員市川和広(いちかわかずひろ)さん(50)も気を張る。秋山川の堤防決壊で2階建て住宅が床上浸水したが、1階のリフォームが年内におおむね終わる見通しという。

 気掛かりなのは同居の実母(79)の体調。近くの親族宅で寝泊まりするが、被災のストレスからか1カ月ほど前に胃の調子を悪くし、何度も点滴を打っているという。

 同所、平野栄一(ひらのえいいち)さん(79)は自宅兼店舗が床上浸水し、50年続けたクリーニング店の廃業を決めた。ここ1、2年で新調した大型機器が全て駄目になり「何とかならないか考えたが」と唇をかむ。多くの得意客からの励ましの声が、せめてもの救いだ。

 現在、妻みどりさん(70)と2階で暮らす。台所も壊れ、外食などが続いたが、最近やっと流し台を入れ替えた。居間の床板はだいぶふさがったが、畳が張られるまでは落ち着かない。

 近隣のアパートは空きが目立つ。被災した自宅の再建を断念し、親族宅などに身を寄せた知人もいるという。みどりさんは「災害で地域から人がいなくなるなんて、寂しくなる」とため息をついた。