被災した作業場にたつ荒川社長=10日午後、宇都宮市

被災して使用できなくなった設備と荒川社長=10日午後、宇都宮市

被災した作業場にたつ荒川社長=10日午後、宇都宮市 被災して使用できなくなった設備と荒川社長=10日午後、宇都宮市

 台風19号による田川の氾濫で被災した宇都宮市大通り4丁目の「釜芳製餡所」は、11日までに年内で廃業することを固めた。創業100年を超える老舗として地域に親しまれてきたが、浸水による設備の損害が大きく、製造再開はかなわなかった。荒川博史(あらかわひろし)社長(73)は「もう少し頑張ろうと思っていたところ、こんな形で終わりになるなんて」と無念さをにじませる。台風が本県を直撃してから12日で2カ月を迎える。

 正月に向け、「本来なら年に一番の繁忙期のはずなのに」。静まりかえった作業場で荒川社長は肩を落とした。

 小豆を水にさらすステンレス製の水槽は、あふれた水で押し上げられ傾いたまま。いくら泥汚れを取り除いても、台風の爪痕は残る。

 製造設備だけでも改修には3千万円ほどかかる見込みという。建物の修繕などを含めると額がさらに膨れ上がる。被害額の大きさや食品衛生の問題を考慮し、廃業を決意した。

 同社は1907年に荒川社長の祖父が創業した。元々は水あめを作っていたが、戦争中に砂糖が入手できなくなると、あんこの製造に乗り出した。最盛期には、年間2億6千万円ほどの売り上げがあった。

 現在は、荒川社長や長男の龍司(りゅうじ)常務(41)ら家族5人で製造・販売を手掛け、北海道から九州まで全国各地の和菓子店などにあんこを卸していた。

 長年の常連客もおり、事務所には今でも時折、事情を知らない客から注文の電話がかかってくる。

 被災してからの2カ月、後片付けと並行して受注が入っていた分の製造を、他の業者に振り分ける手配に追われた。龍司常務が県外に出向いて、製造法を伝授することもあった。

 1世紀以上、守り続けてきた老舗の看板も、甚大な被害をもたらした台風19号により絶たれることになった。