浅井さんと鏑木さんの写真を手に、キリマンジャロの山頂に立つ三輪浦さん=11月3日、タンザニア(阿部さん提供)

 那須雪崩事故で亡くなった大田原高の生徒ら8人と共に雪崩に巻き込まれた同校の元山岳部長三輪浦淳和(みわうらじゅんな)さん(19)が6日までに、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(標高5895メートル)に登頂した。登頂は犠牲になった先輩2人との約束だった。「尊敬する先輩に少し近づけた気がする」。達成感や周囲への感謝を胸に、登山への思いを新たにしている。

 約束していたのは、1年先輩の浅井譲(あさいゆずる)さんと鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん。2016年12月、日光白根山での合宿で3人は同じテントになり、将来や自然について語り合う中で海外の山に詳しい浅井さんがキリマンジャロを紹介した。鏑木さんも関心を示し「卒業後に一緒に登ろう」と約束したが、2人はその3カ月後に亡くなった。

 重傷を負った三輪浦さんは事故後も山岳部で活動し、今年3月に高校を卒業すると、約束を胸に行動を始めた。大学浪人中のため、受験勉強の合間に体力を鍛え、低酸素下の訓練も重ねた。費用はクラウドファンディングで支援を募った。

 “3人”で挑戦しようと、浅井さんと鏑木さんの遺族から2人が事故時に履いていた靴のひもなどを借り、10月末に現地へ出発。日本から同行した北海道山岳ガイド協会所属の阿部夕香(あべゆか)さん(45)や現地ガイドの支援も受け、登山を始めた。

 道中、日本では見られない動植物をたくさん目にした。「鏑木先輩も見たかっただろうな」。景色が次々と変わり、四季が一つの山にあるようだった。「浅井先輩が言った通りだ」。初の海外登山で未体験の標高。頭痛や吐き気に襲われたが、2人の後押しも感じながら必死で歩き続けた。

 そして登山4日目の11月3日、山頂に到着した。「ようやくみんなで来られましたね」。心の中でそう語り掛け、2人の写真を手に眼下の氷河や雲を眺めた。

 大学で生物学を学ぼうとしていた浅井さん。山岳部で競争よりも動植物を愛した鏑木さん。「先輩たちのような人が山で安全に自然を楽しめるお手伝いをしていきたい」。周囲への感謝を胸に刻み、三輪浦さんは新たな一歩を踏み出した。