フェルトペンで手書きされた丁寧な文字だった。

 「閉店致しました。150年間(4代)有難当(ありがと)う御座居(ござい)ました」

 大田原市黒羽田町の交差点近く。中華料理店「泰華楼(たいかろう)」の張り紙が気になって、今月9日、近隣に転居した元店主を訪ねた。

 3代前から商売をしていた店を引き継ぎ、大場隆治(おおばたかはる)さん(72)が中華料理を始めたのは29歳の時。今月6日、43年続いた店を畳んだ。最終日には、名残を惜しむ客が次々と来店した。

 かつては合併前の黒羽町役場があった中心街。店もにぎわったが、次第に客は減っていった。「そろそろ引き際と思ってね。張り紙は感謝の気持ちだよ」。跡地はコンビニになる。

 黒羽地区では、吉永小百合(よしながさゆり)さんのCM効果で雲巌寺への来訪者が急増した。その活気は、まだ街全体には波及していない。

 この春、大田原に赴任した。地方都市には、光もあれば影もある。その影に少しでも光が差すような記事を書きたい。この地に暮らす、一人の生活者として。