NHKの朝ドラ「スカーレット」の主人公が絵付けする火鉢を懐かしく思った読者も多いだろう。昭和30年代まで生活に欠かせない道具だったが、家電製品が普及し姿を消した。その上に載っていた鉄瓶も同様だ▼佐野市は鉄瓶や鍋、仏像など鋳物の製造で栄え、特に茶釜は高い芸術性が称賛された歴史を持つ。伝統を消すことなくまちおこしに生かそうと、市が1998年から隔年で開いている公募展が佐野ルネッサンス鋳金展だ▼大賞作品は市が買い上げ、全16点になった。これらが先月、初めてそろって市を出て、東京芸術大美術館の陳列館に飾られた。折り紙付きの作品が一堂に集まると圧巻だ▼素材はさまざま。光沢が出るまで磨いたり、逆に鋳型から出したままの色を生かしたり。欧州の薬品や技法を用いた斬新なものもあれば、空間を生かした躍動的な作品も並び、鋳金の豊かな表現力を楽しむことができた▼何より、作品が伸び伸びとその美を誇っているように見えた。鋳金はどうしても地味な色合いが多い。市庁舎などに単品で展示されてはきたが、奥深い魅力を伝えられたかどうかは疑わしい。東京での展示は面白い試みだった▼佐野では来年、節目の第10回鋳金展が予定される。芸大での展示をきっかけに、鋳金の可能性を楽しむため佐野を訪れる人が増えるといい。