東日本大震災発生後、全国で外食などを自粛する動きが広がった。当時、石原慎太郎(いしはらしんたろう東京都知事は記者会見で「桜が咲いたからといって一杯飲んでいる状況じゃない」と述べた▼これに反応したのが震災で被害を受けた岩手県の蔵元。二次的な経済被害を心配し「被災地以外の人には東北で造られた日本酒を飲むことで応援してほしい」と動画投稿サイト「ユーチューブ」などで訴え、大きな反響を呼んだ▼台風19号で甚大な浸水被害を受けた佐野市の第一酒造社長の島田嘉紀(しまだよしのり)さん(54)も経済活動の縮小に危機感を抱いている。10月下旬、倉庫に保管し被害を免れた日本酒の出荷が始まったが、売れ行きはいまひとつ▼特に消費の中心の佐野市内の落ち込みが大きい。「市内では被災していない地域で忘年会や新年会のキャンセルの話を聞く。このままでは飲食店などでも販売が減り被災の連鎖となる」と心配する▼通常であれば10月中旬から始まる新酒の仕込みは、麹室(こうじむろ)の修理が終わる来月中旬にずれ込む見通し。復旧に向けこれからという時に、出ばなをくじかれた格好となった▼先日のG20愛知・名古屋外相会合の夕食会の乾杯酒は、同社のスパークリング日本酒という明るい話題もある。「おちょこもう一杯分で復興支援していただければ」という島田社長の訴えに耳を傾けたい。