赤く実ったイチゴを大切に収穫する嶋田さん。パイプハウスは濁流で倒れた=6日午後、足利市稲岡町

 台風19号は収穫間近だった本県産イチゴに甚大な被害をもたらし、農家の生計にも大きな打撃を与えた。イチゴを育てるビニールハウスが浸水した足利市稲岡町、農業嶋田有希(しまだゆうき)さん(26)は9日までに、今年の収穫が見込めないため茨城県内でアルバイトを始めた。営農再建に必要な資金を稼ぐためだ。慣れない仕事に戸惑いながらも「乗り越えられない試練はない」と信じ、来年の出荷再開に向けて日々歩みを進めている。

 嶋田さんは両親の背中を追って就農し、今年2年目を迎えた。今作は初めてハウス6棟の管理を任され、待ちに待った収穫が目前に迫っていた。

 10月12日夜、台風19号によって自宅近くを流れる旗川から大量の水があふれた。嶋田さんのハウスは濁流にのみ込まれ、暖房機具など栽培に必要な機器は浸水し使用できなくなった。

 濁流によって変形したハウス、泥をかぶった苗…。変わり果てた農場を前にして何度も心が折れそうになった。それでも何とか心を保てたのは「たくさんの人が助けてくれたから」だ。

 台風の被害に遭って以降、周辺の農家仲間やJA職員など、大勢の人が泥のかき出しや片付けを手伝ってくれた。だからこそ「助けてくれた人に来年は復活した姿を見せたい」と、営農再建に向けて働きに出ることを決めた。

 現在、平日は飲食店経営の坂東太郎(茨城県古河市)が運営する農場で、イチゴの栽培管理をしている。土日は同社が経営するとんかつ店で接客をすることもあり、慣れない作業に戸惑うことも少なくない。

 そんな時、思い出すのは「乗り越えられない試練はない」という高校時代の恩師の言葉。台風による被害から再起できれば「一回りも二回りも成長できる」と自分を奮い立たせる。

 台風の襲来から間もなく1カ月がたつ中、1度泥をかぶったにもかかわらず、花を咲かせ赤い実をつけた苗もある。「イチゴがこれだけ頑張っているんだから私も負けていられない」。生命力をのぞかせるイチゴから勇気をもらい、出荷再開に向けて奮闘を続ける。