世界最高性能のスーパーコンピューターでも1万年かかる計算を3分20秒でこなした-。米国のIT大手、グーグルが開発した量子コンピューター「シカモア」の実験結果が話題を呼んでいる▼スパコン世界一は米IBMが開発した「サミット」。1秒間に最大20京回(1京は1兆の1万倍)の計算ができる。毎分1万5千リットルの水を循環させ、熱を冷ましている▼シカモアは、心臓部のプロセッサーを絶対零度(セ氏零下273・15度)近くに冷却。原子や電子などの現象を説明する量子力学の原理を利用し計算する。ただ、規模は小さく、実用レベルにはほど遠い▼IBM側は、スパコンで1万年かかるとのグーグルの主張に対し「2日半で可能」と反論し、見解は対立したままだ。こんなことが注目を浴びるのも、量子コンピューターの可能性の大きさゆえか▼日本も政府が年末に開発戦略を打ち出すという。だが、こうした政府主導の戦略が功を奏したという話を日本では、とんと聞かない。最終的に何がうまくいくか分からないから多様な研究を数多く育てる、という発想のないことが一因だろう▼「選択と集中」に凝り固まった政策の弊害と言える。おかげで国立大は疲弊し、若手は劣悪な環境に置かれ、と研究体制は衰弱した。まずはそんな根本的な問題を解かねばなるまい。