台風19号の影響で決壊(中央)した防災重点ため池。田んぼに水や土砂が流れ込んだ=29日午前10時15分、さくら市下河戸、小型無人機から

 台風19号の影響で県内では、決壊した場合に人的被害が生じる恐れがある「防災重点ため池」1カ所が決壊、別の1カ所が溢水(いっすい)していたことが29日までに、県のまとめで分かった。いずれもさくら市内のため池で、人的被害などはなかったが、周辺の田んぼに土砂が流れ込むなどした。2018年7月の西日本豪雨で決壊し甚大な被害をもたらしたため池だが、決壊防止のための補強など早急な対策の必要性が県内でも改めて浮き彫りになった。

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 県などによると、決壊した防災重点ため池は、さくら市下河戸にある「向溜(むかいだめ)」(貯水量1万8千トン)。周辺は田んぼなどで民家が点在している。台風による豪雨でため池を囲む土手の一部が崩れ、水が流れ出た。

 向溜を管理する喜連川土地改良区の理事の笹沼信夫(ささぬまのぶお)さん(73)は13日午前2時ごろ、向溜から1キロほど離れた自宅近くの排水路に大量の水が流れているのを見て「これは決壊したかもしれない」と感じたという。日の出を待って午前4時ごろ、田んぼなどへの浸水を確認した。「まさか決壊するとは思わなかった」と振り返る。

 向溜から北に約400メートルの距離にある「新溜(しんだめ)」(貯水量1万4千トン)は溢水し、周辺の田んぼなどに水が流れた。

 同改良区によると、台風接近に伴う事前の水位調節は新溜で行っていたが、向溜ではしていなかった。

 防災重点ため池は、西日本豪雨を受けて選定基準が、決壊した場合の浸水想定区域に家屋などがあるため池に見直され、県は今年6月、県内の農業用ため池527カ所のうち225カ所を防災重点ため池に再選定したと発表していた。向溜、新溜はいずれも新たな基準で選定された箇所だった。

 県によると、以前から選定していた防災重点ため池では、補強工事が行われている箇所もある。一方で新たに選定したため池では20年度から、決壊の危険性などの調査を実施する予定だったという。

 計8カ所の防災重点ため池のあるさくら市。市は、決壊時の浸水想定区域図などをホームページで公表している。今回の決壊などを受け、担当者は「可能な限り早急に復旧させていきたい」とした。