いじめられ、中学校の対応が不適切で不登校になった-。埼玉県川口市立中の元男子生徒(17)が市を提訴した。市は先月、不法行為はないと反論した。その理由に驚く▼「いじめ防止対策推進法」を批判し、「教育現場に与える弊害を看過しがたい欠陥を持つ」と異を唱えたのだ。「法解釈についての意見を引用しただけ」と釈明するが、法を守るべき自治体が「おかしいのは法律の方」と言い張るのは常軌を逸している▼川口市では先月、いじめへの対応を求めていた別の市立中の元男子生徒(15)が自殺。3回、自殺を図り、市教育委員会の第三者委員会が調査中だった。ノートに「いじめた人を守って、ウソばかりつかせる」と市教委批判の言葉があった▼同法は大津市の中2男子のいじめ自殺をきっかけに制定。いじめを、一定の関係にある他の児童や生徒の行為とし「心理的または物理的な影響を与え、心身の苦痛を感じているもの」と定義した▼市側は、定義が被害者の主観でいじめを広く認めていると批判した。教育より保身を優先する教育関係者の本音が表れたのではないか。一自治体の問題だと済ませてはならない▼法律ができても機能せず、悲劇が繰り返される。国連で「子どもの権利条約」が採択されて30年。5年後に批准した日本では、まだ子どもの権利が軽い。