近隣農家から譲り受けた苗に植え替える高島さん夫妻=24日午後、佐野市大古屋町

 本県農業に甚大な被害をもたらした台風19号は、新規就農者にも容赦なく襲いかかった。佐野市大橋町、イチゴ農家高島弘貴(たかしまひろき)さん(26)のハウスは初めての収穫を前に浸水し、苗が泥をかぶった上に設備も損傷した。損失は大きいが、周囲の支援に背中を押され、収穫に向けて歩み出している。

 泥がこびりついた苗は変色し、葉は弱々しくしなびていた。

 24日午後、同市大古屋町。スカイベリーを育てるハウス内で、弘貴さんは妻明日香(あすか)さん(25)と苗の植え替え作業に追われていた。新しく植える苗は、同市内の複数のイチゴ農家から無償で譲り受けた。その数約3千本。半数を植え替えることになる。午前中には、同業の仲間ら10人以上が駆け付けて作業を手伝った。

 「たくさんの人に心配してもらい、本当にありがたい」と弘貴さん。一方で、手塩にかけた苗を廃棄せざるを得ない状況に心境は複雑だ。

 祖父がイチゴ農家だった弘貴さんにとって、幼い頃から農業は身近だった。大学の農学部に進み、明日香さんと出会った。就農を決意したのは、群馬県の農業生産法人に就職した後。「自分の農業をやりたい」と地元に戻り、約2年の準備期間を経て今年4月に就農した。ハウスは4棟あり、面積は計10アール。畜産の仕事に従事する傍ら、明日香さんも弘貴さんを支えた。

 生育は順調だった。花が付き始め、先輩農家からも「地区内で早めの収穫になるのではないか」と期待されていた。11月中旬ごろには収穫できるはずだった。

 しかし、台風で事態は一変。夏に建てたばかりのハウスがほとんど見えなくなるほどの水が押し寄せ、全ての苗が水に漬かった。「年内の収穫は難しいかもしれない」と弘貴さん。収量の減少や設備の損傷など、被害額は1千万円に上る可能性があるという。

 「こんなことになるなんて思ってもみなかった」。それでも、落ち込む間も惜しんで作業を進める。「イチゴの生命力は強い。自分たちが諦めるわけにはいかない」