台風による浸水で全てのトマトを引き抜いたハウス。吉田さんは近く、新しい苗を植えるという=25日午後、足利市瑞穂野町

 台風19号により県内ではさまざまな農作物に被害が出た。イチゴに次いで被害額が大きいのがトマトだ。中でも足利市は3億3千万円で、全体の5割を占める。浸水の被害が深刻な農家では機械類の故障のほか、手塩に掛けてきたトマトがしおれ、引き抜いて廃棄する事態になっている。収穫は遅れるが、新しい苗の植え替えも始まりつつある。農家は肩を落としつつも、「前を向いて頑張ろう」と気力を振り絞る。

 一面緑色だったはずの鉄骨ハウスは、がらんとしていた。25日午後。足利市瑞穂野町、農業吉田亮(よしだりょう)さん(30)は「今年はバッチリだったんだけどな」と2週間前を思い起こした。「ハウスを見ていると泣けてきますね」とこぼした。

 台風が本県に最接近した12日夜から、トマトを栽培する3カ所のハウスはいずれも浸水し、定植を終えていた2カ所で苗が水をかぶった。被害が深刻なのは、作付けする70アールの半分を占める連棟ハウス。大雨と川の増水で、1メートル30センチほどに育ち小さな実を付けていたトマト全体が水に漬かった。「自分の身も危なく、何もできなかった」。吉田さんは悔しがる。

 12月中旬ごろに出荷できる見通しだったが、葉は縮み、しおれた。栽培を諦め、6千本のトマトを一本ずつ引き抜き、畑に捨てた。「丁寧に作業してきたのに…。悲しいですよ」

 暖房機や高所作業車、水や肥料を自動で与える機械、データを記録していたパソコンなども水に漬かった。トマトと合わせた被害総額は数百万円とみられる。

 一方、救いもあり、業者から余っていた苗6千本を確保できた。週明けからハウスに植える予定だ。別のハウスでは、水に漬かったトマトが病気にならないよう消毒しながら見守る。

 吉田さんは祖母の後を継いで約7年前に就農した。「トマトはみんなを笑顔にする食べ物」と話す。出荷は例年より約2カ月遅れるが、「まだまだ負けていられない。足利のトマトを盛り上げたい」と話した。

 JA足利によると、トマト部に所属する農家48戸のうち、約7割のハウスで浸水被害があった。このうち13戸がトマトの苗の全部または一部を植え替えるという。ただ、苗の納品が12月になり出荷が春先まで遅れるケースもある。