被害に遭った高橋さん方。納屋(左)は崩落し、土石流の威力を物語っている=21日午後2時45分、宇都宮市下小池町

琴平神社や天棚の祭器庫があった場所。押し寄せた土砂や樹木が積もっている=21日午後3時5分、宇都宮市下小池町

被害に遭った高橋さん方。納屋(左)は崩落し、土石流の威力を物語っている=21日午後2時45分、宇都宮市下小池町 琴平神社や天棚の祭器庫があった場所。押し寄せた土砂や樹木が積もっている=21日午後3時5分、宇都宮市下小池町

 台風19号により、宇都宮市北部・篠井地区の下小池町では雷電山の東側斜面で土石流が発生し、復旧作業はほぼ手付かずの状態になっている。中腹にある高龗(たかお)神社の離れでは、天祭で使う「天棚」や境内社が土砂に飲み込まれ、跡形もなくなった。麓にある民家は母屋の天井まで土砂が流れ込み、納屋は押し流されて屋根から崩れ落ちた。(稲葉雄大(いなばゆうだい))

 高龗神社の由緒は平安時代後期の1155年に遡り、天祭は江戸時代中期には行われていたとされる。

 被災したのは、約170メートル北にある境内社の琴平(ことひら)神社と、天棚を収容していた祭器庫など。押し寄せた土砂と樹木により四散したとみられ、現場は厚い土砂に覆われている。

 土砂は1週間以上たった今も、踏み入れると足が沈み込むほど緩い。「地元の宝物」という天棚の一部とみられる彫刻や柱は周辺に散らばり、地元住民らが見つけ次第拾い上げている。太鼓は泥まみれで見つかったが、ほぼ無傷だった。多田民夫(ただたみお)宮司(72)は「幸運の太鼓」とし、11月の例祭で打ち鳴らす予定という。

 琴平神社下方にある高橋(たかはし)アサノさん(70)方では、木造平屋の母屋の天井まで土砂が流れ込み、1年分のコメなどを保管していた木造平屋の大きな納屋は、土砂に押しつぶされるように崩落した。高橋さんは「あと5分気付くのが遅かったら命がなかった」と振り返る。

 12日午後8時ごろ、水の流れる音が聞こえて庭を確認したが、異変は見られなかった。少したってもう一度外を見ると、庭にはすでに膝元まで土砂が流れてきていた。車の鍵を手に家を飛び出したが、車は土砂に飲み込まれ始めていた。真っ暗な夜道を、着の身着のまま自らの足で逃げだした。

 近所の家で朝を迎えて帰宅すると、変わり果てた家の姿があった。「まだ命が助かっただけ良かった。泣いて悲しむ暇も無い」。高橋さんは泥に覆われた家財の片付けに追われている。

 県宇都宮土木事務所によると、下小池町に積もった土砂は水を含み、不安定な状態という。再び動きだす可能性もあり、復旧作業には至っていない。今後は土砂の動きを捉えるセンサーを設置して次の災害に備えつつ、不安定な土砂を取り除くほか、長期的には砂防堰堤(えんてい)の建設も進める予定という。