台風19号は県内で4人の尊い命を奪い、各地に深刻な被害をもたらした。いつ、どこで起こるか分からない自然災害の脅威。命や健康を守るために、どんな備えや心構えが必要なのだろうか。専門家らに聞いた。

感染症

 復旧活動が本格化する中、注意しなければならないのが土砂に潜む細菌などによる感染症。感染免疫学が専門の白鴎大教育学部の岡田晴恵(おかだはるえ)教授は「特に破傷風の危険性が高まる」と警鐘を鳴らす。日頃から意識して備えておきたい。

 破傷風菌は、土壌や家畜のふんなどに存在する。傷口などから体内に侵入すると増殖して毒素を作り出し、神経機能を壊していく。治療が遅れると、重いしびれや歩行障害が起きるほか、全身の筋肉が硬直したり呼吸困難に陥ったりして、死に至るケースもある。

 災害時は片付け作業などでけがをしやすくなるため、発症のリスクが高くなる。岡田教授によると、東日本大震災では10人ほどの発症報告があった。

 片付けの際には、肌の出ない長袖や手袋、底の厚い長靴を着用してけがを防ぐことが第一。万が一けがをしたら、泥をきれいに水で洗い流す。被災状況によっては水の使用が制限される場合もあるため、「飲料水の備蓄以外にも、傷を洗い流すための水も確保してほしい」と岡田教授。

 破傷風の潜伏期間は10日程度。頭痛や不快感などから始まり、下顎や口が動きにくくなる、舌がもつれる、飲み込みにくくなるといった初期症状が現れる。こうした症状が疑われたら、早めに受診し治療を始めることが大切だ。

 予防にはワクチンが有効だが、定期接種対象になったのは1968年。その後も接種が中断された時期があるため、81年より前に生まれた人は接種していない可能性がある。まずは母子手帳で接種しているかどうか確認しよう。破傷風ワクチンの効果は10年程度で低下するため、岡田教授は「10年ごとに接種してほしい。ワクチン接種は、自分でできる有効な防災」と呼び掛ける。

 野外作業では日本紅斑熱をもたらすマダニへの警戒も必要。かまれた場合は皮膚科でマダニを取り除き、10日ほどは体温測定する。

 避難所ではインフルエンザやノロウイルスなどの集団感染にも気を付けたい。手洗いの徹底やせきエチケットを心掛けよう。