台風19号が本県を直撃してから19日で1週間となる。河川の堤防の決壊や氾濫などで、県内は県南を中心に23市町で深刻な農業被害が生じた。ニラのハウスは水流で全壊し、コメを貯留するライスセンターは浸水した。水田の稲穂は泥で茶色く覆われた。深く残る台風の爪痕。県によると、16日時点の農業被害額は約39億8500万円に上るが、全容は見通せない状況が続く。
大量の稲わらや流木、ひしゃげたパイプが、緑色のニラを押しつぶしていた。
県内有数のニラの生産地、栃木市。同市大平町下皆川、農業椎名博(しいなひろし)さん(54)のビニールハウスを、決壊した永野川の水が襲った。約40アール、2カ所で15棟あったハウスは全壊した。台風の通過後、水浸しで跡形もなく、言葉が出なかった。
「ニラは手を掛けた分だけちゃんと育つ。悔しい」。被害確認などでハウスやニラには手を付けられない状態という。被害額は1500万円以上とみられる。
「これからどうなってしまうか分からない。飯がのどを通らない」。椎名さんはそうこぼす。
足利市迫間町、JA足利の尾名川ライスセンターは、すぐ隣を流れる尾名川が氾濫するなどし、施設が水に漬かった。職員が建物に入れたのは浸水から2日後の14日。1メートルほど冠水したとみられ、収穫したばかりの新米が被害に遭った。
コメは地上の投入口から地下のベルトコンベヤーで運ばれ、貯留ビンや乾燥機などに移される。施設は地下部分を含め浸水した。石橋孝雄(いしばしたかお)組合長は「電気系統をやられた。全く機能していない」。機械類の復旧には約1カ月かかるという。
貯留ビンなどに入ったコメは、機械が動かず取り出せない。袋詰めした12トンのコメは水に漬かった。貯留、保管するのはとちぎの星やコシヒカリなど約130トンで、被害は2700万円以上とみられる。また保管中のビール麦など1400トンの一部が水に漬かり、発酵が広がっているという。
「想定外の事態。国や県が助成措置をしてくれないと復旧には至らない」。石橋組合長は肩を落とす。
同市内では1割ほどの稲刈り前の田が冠水したという。稲穂は泥が付いた状態で通常の出荷は難しい状況だ。コメの被害は矢板、栃木市などでも相次いでいる。