「言葉で表現できなくなったとき、『音楽』が始まる」と言ったのは、フランスの作曲家ドビュッシーである。音楽は言語や世代を超えて、奏者と聴衆の心を通わせる力がある▼NHK・BS放送の「空港ピアノ」「駅ピアノ」は、欧米の空港や主要駅に置かれたピアノを弾く旅人たちを定点カメラで捉えた短い番組だ。奏で始めると、見ず知らずの人たちが足を止め、耳を傾け、拍手を送る▼そんな交流は、鮮やかな思い出となって心に残るだろう。最近は国内でも活性化を目指す商店街などが、誰でも自由に弾ける「まちかどピアノ」を置いている▼宇都宮でも19、20の両日、東武宇都宮百貨店の5階キッズスクエアに設置される。ジャズを中心とした音楽のまちにふさわしいとして、うつのみやジャズのまち委員会が企画した。反応次第では来年度以降、事業の拡大を検討する▼ただ事務局は「周りをうかがって誰も弾かないのではないか」と心配する。引っ込み思案な県民性を考えると、さもありなんと思えるが、当日は宇都宮でジャパンカップサイクルロードレースが開かれ、大勢の観客がまちに繰り出す▼外国人も多いだろう。ストリートパフォーマンスに慣れた彼らが先鞭(せんべん)をつけて県民の背中を押してくれたら、音楽と共に多文化共生の素晴らしさも味わえるかもしれない。