道路を覆う泥を地道に除去する人たち=13日午後0時10分、宇都宮市千波町

 濁流が一気に街をのみ込んだ。台風19号による記録的豪雨により県内各地で河川の氾濫や堤防決壊が明らかになった13日、住民らは死の恐怖を感じ、孤立の危機に直面した。待ち受けるのは大量の汚泥と避難生活。「早く元の生活に戻りたい」。住民には疲労と先を見通せない落胆が色濃くにじんだ。

 県都の生活と商業を濁流が襲った。県内に記録的な豪雨をもたらした台風19号の影響で12日夜に氾濫した宇都宮市中心部を流れる田川。「ここまで水が来るとは…」。浸水被害はJR宇都宮駅西口付近から大通り1丁目周辺など広範囲におよび、住民や商店主らは13日早朝から、堆積した泥や漂着したごみなどの掃除に追われた。

 「掃いても掃いても泥が出てくる。1階は全滅。車も駄目かもしれない」。同市大通り3丁目、主婦小島真子(こじまみちこ)さん(72)はスコップで玄関の泥をかき出しながら、表情を曇らせた。

 台風から一夜明けた宇都宮は快晴となり、乾いた泥が土埃(つちぼこり)となって舞った。

 12日午後9時前から自宅へ水が入り始めたといい、1階は腰の高さまで浸水。家族で2階へ避難した。水が引いた後の和室にはひっくり返った畳や日用品、靴が散乱し、「とにかく怖かった。早く元の生活に戻りたい」と声を震わせた。

 同所、会社員男性(40)の自宅敷地内には、持ち主不明のタイヤが15個流れ付いた。「誰が持っていってくれるんですかね」と困った表情を浮かべた。

 同市仲町の半地下にあるすし店「新門」は入り口に土のうを置いて対策したが店内に水がたまり、排水作業に追われた。荒井正(あらいただし)代表(63)は「冷蔵庫も食材もイスも、全部処分するしかない。営業再開はしばらく見通せない」と唇をかんだ。

 中心部から下流の同市川田町に掛かる「川田橋」は12日深夜に崩落。消防団員として近くを巡回していた宇都宮市職員、黒後千尋(くろごちひろ)さん(31)は「橋に流木がいくつも引っかかり、ぐらぐらと揺れていた」と当時の状況を語った。

 自宅近くの崖崩れを恐れ、13日早朝まで避難所の昭和小で不安な一夜を過ごした同市大曽1丁目、柴田玲依(しばたれい)さん(72)は「体は全く休まらなかったが、1日で帰宅できて本当によかった」と安堵(あんど)した。