森高千里(もりたかちさと)さんの歌で一躍有名になった足利市の渡良瀬橋。市中心部を流れる渡良瀬川にあり、美しい夕日を見に今なお観光客が訪れるが、市民の愛着がより強いのはすぐ下流に架かる中橋だろう。3連アーチが印象的な緑色の鋼橋だ▼1907(明治40)年に東武足利市駅が川の南側にでき、対岸の市街地を結ぶ橋が必要になった。とはいえ初代は、渡し舟の上に板を渡しただけの舟橋だった▼36(昭和11)年に現在の橋が完成した。当時、同じ型式のアーチ橋は威風堂々としたたたずまいから世界中の都市の入り口に造られ「帝都の門」と呼ばれた。繊維産業で隆盛を誇った足利のまちの門にふさわしかったと言えよう▼その中橋は今、架け替えに向けた協議が進む。老朽化に加え、堤防が途切れた形で橋が架かっているため、そこから水害が発生する危険性が高い▼近年は各地で河川災害が頻発し、堤防のかさ上げは急務だ。ただ、思い入れのある今のアーチ橋を残すのか、デザインだけでも継承するのかといった詳細は決まっていない▼足利大工学部の福島二朗(ふくしまじろう)准教授は「人間の生命・財産を守るのが土木の使命。架け替えは必要」としながらも、日本の近代化に貢献してきた建造物が急速に姿を消していることを残念がる。市民のふるさと愛を裏切らない橋となるよう、見守りたい。